野菜が食べられない 自分で料理、興味持たせて 6/1

 子育て中の親を悩ます子どもの偏食。とりわけ野菜は、苦手な子が少なくありません。工夫しても食べてくれず、親が疲弊してしまうケースも。記者の息子も「筋金入り」の野菜嫌い。どうすればいいのか探りました。

 4歳になる息子は、妻に言わせれば「炭水化物でできている」。食べるのはおにぎりとうどんばかりで、キャベツやホウレンソウなど「青もの」にはプイと顔をそむける。

 評判のレシピ本から妻が30メニューほど試してみたが、かたくなに野菜を拒む。一生懸命だからこそ妻のイライラは募り、食卓は日々、気まずい雰囲気に。私も八方ふさがりの心境だった。

 子どもの食に約40年かかわる料理研究家坂本廣子さんを訪ねると、シンプルな答えが返ってきた。「食べない食材には、負のイメージがついていることが多い。イメージの『結びつけ直し』をすると抵抗感がなくなりますよ」

 自分で調理すれば苦手意識の軽減につながる、と坂本さん。主宰する料理教室「キッズキッチン」を息子とのぞいてみることにした。

 4月中旬、神戸市東灘区の教室には2〜4歳の子どもが10人。献立は、いわしの煮付けにインゲンのごまあえ、ご飯、大根のみそ汁だ。

 まずは坂本さんが食材を丁寧に説明し、調理して見せた。「素材を認識した上で、どんな筋道で食べ物が出来上がるのか感じてもらうことが大切。作ることで五感が刺激され、『食べなくては』から『食べてみたい』に変化を促すのです」

 いざ、実践。すり鉢でゴマをすり、怪しい手つきでイワシのはらわたを取り出す。決して口にしないインゲンを切る息子に、坂本さんは「すごいすごい、長さがそろっているね」と声をかけた。

 自分の器に、食べきれるだけの量を盛りつけるのも子どもたち自身。インゲンをスプーンに3杯盛った息子に目を疑った。

 いよいよ食事。息子は、ごはんとみそ汁を食べた後、天敵の一つ、ネギをじっと見つめてから口に入れた。「いまネギを食べた?」と聞くと、「おいしかった」とニヤリ。インゲンも半分食べた。

 翌日、息子は姉とインゲンのごまあえを作った。食べはしなかったが、料理教室で自分から食べる姿を目の当たりにした記者には「食べるまで待ってみよう」という気持ちのゆとりが生まれていた。

 1カ月後。ホウレンソウのスープを初めて完食。翌日も食べた。息子の心の中に、変化が生まれつつあるようだ。

 (田中章博

 ■手伝い・味見、五感刺激

 国立総合児童センター「こどもの城」(東京)の管理栄養士、太田百合子さんに、野菜との付き合い方を聞いた。

     ◇

 野菜や肉・魚、山草、海藻と食材豊かな日本は、子どもがなじむのに時間がかかる食べものが多い。中でも野菜は食感と味の両面で、子どもにとってハードルが高い食材です。3歳ごろまでは奥歯がないためペラペラしたレタスやワカメ、トマトの皮はすりつぶせないし、バラバラになるブロッコリーはうまくかめない。野菜の苦みやえぐみ、ドレッシングの酸っぱさは本能的に拒否してしまいがちです。

 食べやすくするには、ニンジンなら軟らかく煮る、ゴボウやレンコンなら薄切りにする。カレー粉やバター、しょうゆで味に変化をつけるほか、油炒めや素揚げも有効です。

 五感を刺激するのも重要。大人がおいしく食べている姿は記憶に残りますし、料理の手伝いや買い物での野菜選びも、食への関心につながります。料理中に味見をさせて「甘い方がいい」「濃い味がいい」という言葉を引き出すと、選んだ実感がわき、食べる意欲を高めます。

 細かく刻んだりすりつぶしたりして、食材が入っていることがわからないようにする方法は、苦手意識の克服にはつながりにくい。「食べてみたら意外とおいしい」という体験を重ねることが大切です。

 無理強いや否定は禁物。親も疲れてしまわないよう、無理のない形で食卓に並べ続け、時々声かけをしながら、長い目で見てあげて下さい。

 ■子どもが作れる野菜克服レシピ(坂本廣子さんによる)

 ◇ステップ1★ピーマンのスープ

<主な材料・4人分> ピーマン7個(200グラム)、タマネギ中半個(120グラム)、牛乳300cc、クリームチーズ50グラム

<作り方>

(1)ピーマンは縦に4分の1に切り、タマネギはくし切りに。

(2)フライパンにサラダ油小さじ2をひき、ピーマンを炒め、焦げ目がついてしんなりしたら水1カップとタマネギを加え、ふたをしてしばらく蒸し焼きに。

(3)野菜が軟らかく煮えたらミキサーに入れ、牛乳、クリームチーズ、塩小さじ半分を加える。お好みでこしょう少々を入れ、とろりとするまで混ぜる。

 ◇ステップ2★ナスのカレー

<主な材料・4人分> ナス4本(450グラム)、タマネギ大1個(300グラム)、トマト2個(320グラム)、枝豆40粒、牛ひき肉200グラム、しょうがうす切り1枚、にんにく1かけ、米粉大さじ1

調味料A(カレー粉大さじ1、しょうゆ大さじ2、ウスターソース大さじ2、ケチャップ大さじ1、酒大さじ1)

<作り方>

(1)ナスは厚さ約1センチの輪切りにし、四つに切る。

(2)タマネギはみじん切りに、トマトはザク切りに。にんにくはつぶす。枝豆はゆでておく。

(3)鍋にサラダ油大さじ1をひき、しょうが、にんにくを入れて炒め、ひき肉、塩小さじ半分を加えて炒める。タマネギを入れ透き通るまで炒めてからナスを加え、子どもが調理する場合はこげつかないよう水1カップを入れる。

(4)調味料Aをすべて入れてふたをし、15分程度で全体に火を通し、トマトを加え5分ほど煮て、お好みで米粉を混ぜとろみをつける。盛りつけの際に枝豆を散らす。

 ◇ステップ3★ニンジンのたらこあえ

<材料・2人分> ニンジン中半本(100グラム)、たらこ20グラム、サヤエンドウ4枚、ごま油大さじ半分

<作り方>

(1)ニンジンは皮をむき、ピーラーでリボン状に薄く切り、長さ5センチに切る。サヤエンドウは、すじをとって千切りにする。

(2)フライパンを温めごま油をひき、ニンジンを中火で炒める。薄く透き通ってきたら、水大さじ1を何回かに分けて入れながら火を通し、サヤエンドウを入れ炒める。

(3)ざく切りにしたたらこを入れてよくまぜ、全体に火を通す。

引用http://digital.asahi.com/articles/DA3S11167069.html