新1年生、親の心構え ワクワク感高める声かけを

小学校の入学式まで1カ月。初めての学校に不安を感じドキドキしている子もいそうです。子どもの不安への向き合い方や学校への関わり方など、入学前の親の心構えは?

 「入学前の子どもたちは、期待と不安が入り交じった気持ちでいる。周りの大人たちが、ワクワクする気持ちを伸ばしてあげるといい」と話すのは、児童文学作家のくすのきしげのりさん(53)。徳島県で、小学校教諭を26年間務めた経験がある。2月に出版した「いちねんせいになったから!」では、新1年生の気持ちを絵本にした。

 新入生のりゅうたろうくんは、友達を100人つくる方法をいくつも考える。入学式当日は緊張のあまりもじもじしてしまうが、優しい先生に迎えられ、声をかけてくれた女の子とも友達になる。

 「緊張するのは周りの子も同じ。教室で初めて会う子も不安な気持ちでいるとわかれば、自分から『一緒に遊ぼう』と声をかけてみようと思える」

 くすのきさんが勧めるのは、入学前に子どもに物を示しながら、これまでの成長を振り返ってみることだ。着られなくなった服や履けなくなった靴を見せて「大きくなったね」と話したり、お絵かきや工作を並べて「上手になったね」とほめたり。昔できなかったことができるようになったと実感することで、「小学校ではもっと色々なことができる」と自信を持てるようになるという。

 注意したいのは、言葉のかけ方だ。「1年生になるのにこんなこともできないの!」と叱るのは、「小学校が大変な場所だという印象を与え、意欲をそいでしまって逆効果」。「早起きしたら、授業が始まる前に少し友達と遊べるかもよ」などと、期待感を高めるのが効果的だという。

 授業中に立ち歩くなど問題行動に思えることも、じっくり話を聞くと、子どもなりの言い分があることが多い。授業についていけていない、友達とけんかして気持ちが収まらないなど、悩みに気づくこともあるという。勉強については、親が教科書を一度通読しておくだけでも、子どもの関心やつまずきに気づきやすくなる。

 学校での様子が、親に見せる態度と違うこともある。「先生は子どもをよく見ている。心配なことがあったら、先生を信頼して相談してみてほしい」

 ■先生と積極的につながって

 子どもの学校生活を支えるには、先生との関係づくりも重要だ。学校と保護者の関係に詳しい大阪大学大学院の小野田正利教授(教育制度学)は「学校に行く限られた機会をフル活用して、先生に話しかけて」と呼びかける。

 例えば授業参観の後、学級懇談会が開かれることがある。「授業だけ見て帰る親も多いが、先生とゆっくり話せる数少ない機会。顔を出すことで、いざというときに相談しやすくなる」と話す。

 子どもが学校を嫌がるなど、学校の対応に不安を感じたときは「我慢して不信を募らせる前に、先生と話すことが肝心」。ただ、一定の配慮も必要だという。

 朝や日中に電話をしても、先生は授業で忙しく、対応しにくい。比較的落ち着いて話せるのは、子どもたちの下校後になるという。

 連絡は、まずは担任から。「校長や教育委員会にいきなり電話をしたり、文書を送ったりする人もいるが、余計な混乱を招いて担任との間に壁をつくってしまう」。いじめの疑いがあるなど不安が大きいときには、あらかじめ約束を取り付けた上で学校に行き、直接、顔を見て話し合うと気持ちも伝えやすい。

 親同士がつながることで防げるトラブルもある。

 例えば、子どもが友達にけがをさせてしまった時。最近は個人情報保護を理由に連絡網を作らない学校もあるため、連絡できないでいるうちに、相手の親に不信感を抱かせてしまうケースも。学校が配布しないときは、PTAが呼びかけて親の同意をもらい、連絡網をつくる方法もある。

 小野田教授は「学校や周りの親と、気軽に情報交換や助け合いができる関係づくりは、子どものサポートにもつながる」と話す。

 (伊藤舞虹)

引用http://digital.asahi.com/articles/DA3S11627015.html