子連れでの買い物 目の高さ合わせ諭して 9/21

ベビーカーから降りたがったり、お菓子がほしいと駄々をこねたり。小さな子どもを連れての買い物は大変です。少しでも負担を減らすにはどうしたらいいのでしょうか。

 「追いかけて、捕まえての繰り返しでした」。東京都品川区の主婦(31)は先月、1歳半すぎの息子を連れて買い物に行った。普段はベビーカーに乗せるが、だいぶ足取りもしっかりしてきたので、試しに歩かせてみることにした。

 すると、自分の思い通りに歩き回りたいと、床につっぷして泣き始めてしまった。周りの目も気になり、仕方なく店内の「散歩」に付き合うことに。いつもは15分程度で済む買い物が、30〜40分もかかってしまった。

 「つないだ手を急に振り払って方向転換することもある。どこへ行くにも、周囲に迷惑かなと思ってしまいます」と話す。

 子どもにとって、ママやパパと一緒のお出かけはうれしいこと。子育て支援NPO法人ハートフレンド」(大阪市東住吉区)の徳谷章子代表理事は「興奮し、おとなしくできないのは自然なことです」と話す。

 おとなしくできない理由はさまざまだ=表。赤ちゃんのころは「眠い」「おなかがすいた」など生理的な理由が中心。歩けるようになるとベビーカーから降りたがったり、商品を触りたがったり。幼児期では、オモチャを買ってほしいと駄々をこねるなどが典型的なケースだという。

 では、どのような工夫をすればいいのだろう。

 特に難しいのは、自己主張が激しくなる一方で、まだ状況を察するのが苦手な2歳前後。床にのけぞったり、泣き叫んだりしてしまうことが多いのもこの年代だ。

 それでも徳谷さんは「どうせ言っても分からないと思わずに、真剣に言い聞かせて」とアドバイスする。完全に理解できなくても、雰囲気は伝わるからだ。コツは目の高さを合わせて話すこと。ただし、「ダメ」という言葉は子どもがかえって興奮してしまうので逆効果。「お店のものだから触らないよ」などと明確に諭す方がいいという。

 事前のシミュレーションもおすすめだ。買い物に行く前に、家でオモチャを商品に見立ててかごに入れたり、レジでお金を払ったりするまねをし、何が起きるのかを理解させる。見通しが立たない不安が減り、安心して行けるようになるという。

 「それでも買い物中に泣いてしまったら、一度外に出て、気持ちを落ち着けてみて」と徳谷さんは言う。

 一方、乳幼児の一時預かり事業などを手がけるNPO法人「ふれあいの家―おばちゃんち」(東京都品川区)代表理事の幾島博子さんは「赤ちゃんのうちは、生活リズムに合わせる方がいい」と言う。十分に授乳した後や、買い物中にベビーカーや抱っこ・おんぶで寝てくれる時間帯を選ぶと負担も少ない。

 ただ、公共のルールを理解できない乳児期は、パートナーに見てもらえる時間帯に買い物するなど、場合によっては連れて行かない選択も考えよう。また、3歳前後になれば少しずつ「お約束」ができるようになる。「お菓子は買わない」「店内では歩く」など、守らせたいルールを事前にはっきり伝えておくとよいという。

 幾島さんは「生活経験として買い物に連れて行くことも大切。子どもの年齢や性格に合った工夫を探してみましょう」と話す。

 ■周囲の人も声かけを

 とはいえ、やはり泣いたり騒いだりすることもある。親としては、周囲の目が気になるだろう。

 子育てと社会の関係に詳しい恵泉女学園大の大日向雅美教授(発達心理学)は、迷惑をかけないような親側の努力は必要だとしたうえで、「冷たい視線ばかりが気になるかもしれないが、子連れへの優しいまなざしも多い。気にしすぎない方がいい」と言う。

 お菓子をほしがって騒いでも要求のまま買い与えない、という毅然(きぜん)とした態度が必要なこともある。NPO法人「せたがや子育てネット」の松田妙子代表理事も「周囲を気にする気持ちはわかるが、頑張っている自分に自信を持って」とエールを送る。

 一方、泣いたり騒いだりしている子どもを見かけた場合、周囲にいる人は、できるだけ声をかけてあげてほしいという。

 「子どもも引っ込みがつかなくなっているときは、第三者が入ることで収まる場合も多い」と松田さん。大日向教授は「周囲の視線に敏感になるあまり、親側に親切を受け入れる余裕がない場合も。『余計なおせっかい』などと思わずに、みんながこの子を守ろうとしてくれていると考えて」と話す。(小林未来)

 ■買い物の工夫例

・土日にまとめ買い

・店がすいている開店直後に行く

・お菓子はパパと一緒の時だけと決めている

・買った物を自宅に配達してもらうサービスの利用

・ほしがるものの会計を先に済ませ、手に持たせる

・買い物リストを事前に作り、素早く終わらせる

・行きがけに公園などで遊ばせ、歩きたい欲求を満たしておく

・周囲に「すみません」「ご迷惑をおかけします」と声をかける

・歩きたがったらベビーカーを一緒に押させる

 (乳幼児がいる都内の母親10人への取材から)
引用http://digital.asahi.com/articles/DA3S11361297.html